2025/07/18

「AIはツールだから心配ない」と言う経営陣は頭の中がお花畑か嘘を言っている

目次
  1. 日本の労働人口の49%が代替される現実
  2. 現在の日本の状況と予測
  3. 取締役会議での「社名変更」決断
  4. 今回の革命は過去と何が違うのか
  5. アメリカの状況が示す未来
  6. 弊社プログラマーの生き残り戦略
  7. 最初で最後のビッグチャンス

いまだに「AI革命によって新たな仕事が生み出される。AIはツールだから心配しなくて良い」と言っているマネージャーや経営陣がいたら、意図的に建前を言っているか、今回の技術がもたらす結果をわかっていない頭の中がお花畑のどちらかだ。

今回のAI革命は、産業革命やインターネット革命、スマートフォン革命とは根本的に違う。これまでの技術革新は新しい職業を生み出してきた。産業革命では機械工や鉄道員が生まれ、インターネット革命ではSEやWEBデザイナー、スマートフォン革命ではアプリエンジニアが生まれた。

でも今回は違う。AIによって、向こう1~5年間でエントリーレベルのホワイトカラー職の半分が消滅し、失業率を大きく押し上げる可能性がある。

日本の労働人口の49%が代替される現実

野村総合研究所の2015年の調査では、日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能になるという試算が出ている。これは単なる予測ではなく、現実味を帯びた数字だ。これはLLMの進化が急激に起こった遥か前だ。参考URL: https://japan.cnet.com/article/35074352/

AIに代替されやすい職業の例を見てみよう:

事務系職種

  • 一般事務
  • 経理
  • コールセンター
  • データ入力作業員
  • 銀行窓口業務
  • 医療事務
  • 保険審査員

専門職・士業

  • 税理士
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 行政書士
  • 中小企業診断士
  • 社会保険労務士
  • 宅地建物取引士
  • 会計士の一部業務
  • 不動産鑑定士
  • 弁理士

医療関連

  • 診断業務を行う医師
  • 診療放射線技師
  • 薬剤師
  • 医療画像診断技師
  • 検査技師の一部業務
  • 歯科技工士

その他

  • 翻訳者
  • ライター
  • 銀行融資審査員
  • 保険査定員
  • 市場調査員
  • 受付業務
  • 郵便配達員
  • 運転手

現在の日本の状況と予測

現在の日本の失業率は2.5%程度で、これはコロナ前(2020年2月)以来の低水準だ。一方で、日本の過去最高失業率は、リーマンショック後の2009年7月の5.5%だった。

しかし、AIが社会に浸透し始めた場合、日本の失業率は急激に増加するのは間違いない。これは歴史的な最高水準をはるかに超える数字だ。

取締役会議での「社名変更」決断

先日、弊社の取締役会議で社名を「Grune AI Technologies」に変更することを決めた。

取締役と「AIがコモディティ化したらどうする?」「AIという言葉が陳腐化したらどうする?」という議論になった。僕らの結論は即出た。AIは全業種を変える。AIがすべてを飲み込む。そのあとには、もはやぺんぺん草も生えていないのではないか。

もちろん、社名変更は面倒な作業が多い。契約書の変更、名刺の作り直し、WEBサイトの更新、取引先への連絡…。でも、社外・社内に覚悟を示すという観点からは最高のコストパフォーマンスだと思う。

今回の革命は過去と何が違うのか

産業革命では蒸気機関の発明により機械工や鉄道員が生まれた。インターネット革命ではSEやWEBデザイナー、ECサイト運営者が生まれた。スマートフォン革命ではアプリエンジニアやソーシャルメディアマネージャーが生まれた。

でも今回は違う。ホワイトカラーの方が先に影響を受け、そのあとAIを搭載したロボット革命が続く。これまでは新しい技術が新しい職業を生み出してきたが、今回はAIに奪われる仕事より、新たに生み出される仕事の方が少ない。

これが現実だ。

アメリカの状況が示す未来

2025年初の米IT失業率は3.9%→5.7%へ急上昇。失職者は15万人超と推定されている。Microsoft をはじめ大手が連続レイオフ。CEO ナデラは「社内コードの20〜30%は既にAI生成」と公言している。

一方で、2025年Q1の「AI関連求人」は前年比+25%(約3.5万件)。中央値年収は$157kを維持している。つまり、AIを作る・運用する側の需要はむしろ拡大しているのだ。

参考URL: https://techstory.in/microsoft-layoffs-2025-nadella-tells-employees-to-learn-ai-for-performance-reviews/
https://www.nytimes.com/2025/07/02/technology/microsoft-layoffs-ai.html

弊社プログラマーの生き残り戦略

この状況を受けて、弊社では社内のプログラマーがどのように生き残るかを真剣に検討している。単純にコードを書くだけの時代は終わった。これからは以下の能力が必要になる。

顧客要望の聞き取りとAIファースト企業への変革支援
プログラマーは技術者である前に、顧客の課題を理解し、AIを活用した解決策を提案できるコンサルタントになる必要がある。「このシステムをAIで効率化できませんか?」という問いに対して、技術的な実装だけでなく、業務フロー全体の最適化まで含めた提案ができる人材が求められる。

技術を活かした新規自社サービスの立ち上げ
これまで受託開発に特化していたプログラマーも、自社サービスの企画・開発に参画する必要がある。AIを活用した新しいビジネスモデルを技術的な観点から提案し、プロダクトオーナーとして事業を推進できる能力が重要だ。

その他の生き残り方法

  • AIツールを使いこなし、開発効率を10倍に向上させる
  • 複数のAIサービスを組み合わせたシステム設計ができる
  • 他業界の知識を身につけ、業界特化型のAIソリューションを提供できる

つまり、プログラマーは「コードを書く人」から「AIを活用して事業を推進する人」へと進化する必要があるのだ。

幸い日本では、「生成AIが人から仕事を奪う」などといったセンセーショナルな脅威が語られることはほとんどない。これはメンバーシップ型雇用による終身雇用が基本のため、特定の職務を生成AIが代替しても、従業員は別の職務に移ればよいからだ。

最初で最後のビッグチャンス

チャンスはピンチの顔をしてやってくる。僕らは仕事人生において、最初で最後のビッグチャンスの真っ只中にいる。

この革命の波に乗るか、飲み込まれるかは、今この瞬間の判断と行動にかかっている。多くの人を抱えている日本の大企業はすぐには変われない、せいぜい新卒社員の採用を絞るのが精一杯だ。弊社が社名を「Grune AI Technologies」に変更するのは、この時代に対する僕らの答えだ。

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