2025/06/03

24時間365日のAIテレアポに漂うディストピア感

目次
  1. 24時間365日働く営業マン、爆誕
  2. スパム以外の何物でもない
  3. 防御側の苦悩:僕らの会社でも起きていること
  4. メールが教えてくれた教訓
  5. 技術に魂を込める責任

24時間365日働く営業マン、爆誕

「AIテレアポくん」は、「1日数千件のコールが可能」で「24時間365日、自動で大量架電」を謳い、人間に代わってAIが営業電話を行うという。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000084222.html

スパム以外の何物でもない

冷静に考えてみてほしい。そもそも電話という行為は何なのか?相手の時間を強制的に奪う、極めて侵略的なコミュニケーション手段である。だからこそ、「特別な間柄」の人だけに許される行為のはずだ。

それをAI技術を使って、求められてもいない電話を大量にかけ続けるなんて、社会迷惑以外の何物でもない。

見えないコストを誰が払っているのか

これにはもっと深刻な問題がある。AIテレアポが消費する社会リソースのことだ:

  • 通信帯域の専有:大量の通話は通信インフラに負荷をかける
  • 電力網への影響:サーバーから通信設備まで、膨大な電力を消費
  • 社会コストの転嫁:企業の利益のために、社会全体のリソースを無駄遣い

これって、公共の道路を使って自分の宣伝カーを走らせまくるようなものじゃないだろうか。技術的に可能だからといって、やっていいことと悪いことがある。

防御側の苦悩:僕らの会社でも起きていること

実は、うちの会社でも一部、電話受付を代行サービスに頼んでいる。理由は単純で、メンバーの集中力を阻害されたくないからだ。集中している時に営業電話が鳴ると、その後のパフォーマンスがガクッと落ちる。これは科学的にも証明されている事実だ。

でも考えてみてほしい。もしAIテレアポが本格普及したら、今度は受電側もAIで対応せざるを得なくなる。そうなると…

AI vs AIの不毛な戦争の始まりだ。

メールが教えてくれた教訓

実は、これと似たような現象は過去にもあった。メールが普及したとき、手紙に比べて送信が容易なため、スパムメールが大量に送られるようになったのだ。

最初はひどい状況だった。受信ボックスはスパムで埋まり、重要なメールを見つけるのも一苦労。でも、メーラーの迷惑メール機能が進化して、だいぶマシになった。

電話の場合も同じパターンになりそうだ:

  1. AIテレアポの台頭:大量の営業電話が社会問題化
  2. AI受電システムの普及:防御のためのAI開発競争
  3. イタチごっこの始まり:攻撃AI vs 防御AIの終わりなき戦い

技術に魂を込める責任

このサービスは、「メールだけではなく、大量のスパム電話をかけれることができるようになりました!」という話だ。ぜひ使ってください!とプレスリリースを堂々と打つなんて、感覚がどうかしちゃってるとしか思えない。

企業も個人もAIから無限にこんな電話がかかってくるサービスは迷惑千万だ。そんなサービスを利用する商品を好きになるわけがない。そんなことも想像できないのだろうか。

AIテレアポの話を通じて見えてくるのは、作り方、使い方次第では、AIは簡単にディストピアを作ることもできてしまう。重要なのは、AIが人間を支えるユートピアを作れるかどうか。

関連記事


icon-loading

ハルシネーションは敵か味方か – 創造性を加速するAIの取扱説明書

生成AIのハルシネーションを正しく理解し、temperature・top_p・プロンプトで出力を制御する実践法を解説。gpt-5の抑制傾向、人間の創造性やSFが技術革新に与えた影響、ポストイットとペニシリンの発明エピソードまで網羅する。

icon-loading

LLMを変えた分岐点:「Attention Is All You Need」とTransformerの前後比較

論文「Attention Is All You Need」が提案したTransformerは、AIの文章理解と生成を根本から変えた。本記事では、その仕組みと前後比較をビジネス視点で解説し、なぜ今この技術を知ることが戦略的メリットになるのかを明らかにする。

icon-loading

イーロン・マスク第一弾 – テスラの自動運転戦略:ウェイモとの決定的な違いとLiDAR不要論

イーロン・マスク率いるテスラの自動運転戦略を解説。ウェイモとのセンサー構成の違い、LiDAR不要論、トップダウン経営による大胆な方針転換、そして完全AI制御への移行までを網羅。長期的にはロボット「オプティマス」との連携を視野に入れたテスラが有利とする理由を探る。

icon-loading

10km先のエロ本からGrokのSpicy Modeへ – 性欲がテクノロジーを進化させる

性欲は人類最強の技術普及ドライバーである。VHS普及からGrokのSpicy Modeまで、アダルトが牽引してきたイノベーションの歴史と、AI時代における性欲とテクノロジーの新たな関係性について、IT企業CEOが実体験を交えて解説。