2025/05/24

AIはインフラになる

目次
  1. 気づけばインフラだった
  2. インフラとは何か?
  3. 採用面接の現実
  4. AIを使える人、使えない人
  5. コードを書く速度だけじゃない
  6. まだ間に合う、でも急げ
  7. では、どうすればいいのか?
  8. インフラ化の波に乗れ
  9. 最後に

気づけばインフラだった

今や、ビジネスパーソンにとってインターネットが使えないことは「ハンディキャップ」ではなく、もはや「致命的な欠陥」として扱われる。PCが使えない、Excelなどの表計算ソフトが使えない、そんな人を採用する企業はほとんどないだろう。

AIもまさにそうなろうとしている。

インフラとは何か?

インフラストラクチャー(Infrastructure)という言葉を改めて考えてみよう。社会の基盤となる設備やシステムのことだ。電気、ガス、水道、道路、鉄道、そしてインターネット。これらがない生活なんて、もはや想像できない。

忘れがちなのは、これらのインフラは段階的に「当たり前」になっていったということだ。

電気が普及し始めた頃、「電気なんて贅沢品だ」と言っていた人もいただろう。インターネットが登場した時も、「そんなもの、仕事に必要ない」と言っていた経営者がたくさんいた。でも気がつけば、これらなしには1日も過ごせなくなっている。

採用面接の現実

想像してみてほしい。今、採用面接でこんな人が来たとする。

「私はPCを使えませんが、そろばんがとても得意です。表計算ソフトは使えませんが、紙の伝票計算なら誰よりも速いです!」

この人を採用する会社がどれくらいあるだろうか?おそらく、ほとんどないだろう。なぜなら、PCや表計算ソフトを使える人と使えない人では、生産性に圧倒的な差があるからだ。どんなにそろばんが上手くても、Excelを使える人の生産性の何十分の一にしかならない。

これと全く同じことが、AIについても起こりつつある。

AIを使える人、使えない人

しばらく前から採用面接でAIをどの程度活用できるかを必ず聞くようにしている。

「どんなAIの使い方をしていますか?」

答えは本当に様々だ。

ある候補者は「GitHubのCopilotでTDD開発を効率化していて、テストケースの洗い出しとエッジケースの特定をAIに任せています。あと、レガシーコードのリファクタリング時に、デザインパターンの適用提案やパフォーマンス最適化のアドバイスをもらっています。APIドキュメントの自動生成とSwagger定義の品質チェックも活用しています。最近だと、SQLクエリの最適化とインデックス設計の検証もAIに相談しています」と具体的に答えてくれる。
一方で、「ChatGPTでたまにコードレビューをお願いしたり、英語の技術文書を翻訳してもらったりする程度です。基本的な質問しかしていないので、もっと活用できそうだとは思うんですが…」という人もまだまだ多い。

前者と後者、どちらの生産性が高いかは言うまでもない。AIを使いこなしている人は、確実に1.5倍、2倍、時には10倍の生産性を発揮している。

コードを書く速度だけじゃない

AIの活用範囲は、もはやプログラミングだけに留まらない。

  • 企画書の叩き台作成
  • 議事録の要約
  • メールの文章チェック
  • プレゼン資料のアイデア出し
  • データ分析の方向性検討
  • マーケティング戦略の考察

これらすべてで、AIを使える人と使えない人では圧倒的な差が生まれている。

まだ間に合う、でも急げ

幸い、今はまだ過渡期だ。「AIを使えない人」でも、まだギリギリ社会で働いていける。でも、この状況がいつまで続くかは分からない。

3年後、5年後の採用面接を想像してみてほしい。

「AIは使えません」 「何か宗教的な理由でもあるんですか?」

こんな会話が普通に交わされるようになるかもしれない。

では、どうすればいいのか?

まずは触ってみることだ。ChatGPT、Claude、Gemini、なんでもいい。日常の小さなタスクからAIに任せてみる。

  • 長いメールの要約を作ってもらう
  • 会議の議事録を整理してもらう
  • アイデア出しのブレインストーミング相手になってもらう
  • 英語の文章をチェックしてもらう

慣れてきたら、もう少し複雑なタスクも任せてみる。

重要なのは、AIを「完璧な答えを出してくれる魔法の箱」として期待しないことだ。AIは「めちゃくちゃ有能だけど、時々間違えるアシスタント」として付き合うのが正解だ。

インフラ化の波に乗れ

電気が普及した時、それを活用した企業が勝った。インターネットが普及した時、それを活用した企業が勝った。

AIのインフラ化も同じだ。

個人レベルでも、組織レベルでも、AIを使いこなせるかどうかで明確な競争優位が生まれている。

最後に

15年前、「スマホなんて仕事に必要ない」と言っていた人たちがいた。10年前、「クラウドなんて危険だ」と言っていた人たちがいた。

そして今、「AIなんてまだ実用的じゃない」と言っている人たちがいる。

歴史は繰り返す。新しい技術がインフラになる時、それを受け入れた人と拒否した人の間には、埋めがたい差が生まれる。

AIはインフラになる。もうすでになりつつある。この波に乗り遅れないためにも、今すぐにでもAIとの付き合い方を学び始めるべきだ。

関連記事


icon-loading

「AIボーイフレンドを返して!」GPT-5より劣るGPT-4oが愛される理由

GPT-5登場で起きた#keep4o運動の衝撃。4,300人が署名し24時間で旧モデル復活という異例事態から見える現実とは?「デジタルラブレター」「AIボーイフレンド」と表現するユーザーたち。IT企業CEOが語る技術者の本音vs感情AI需要のギャップ、B2BとtoCでの使い分け戦略、AIが人間に近い役割を果たす時代の到来。

icon-loading

イーロン・マスク第二弾 – 映像で学ぶロボット「オプティマス」が加速する進化の未来

テスラが開発するヒューマノイドロボット「オプティマス」は、自動運転と同じカメラ学習基盤で進化を加速する。家庭や工場でのデータ収集により能力を向上させ、Xの生成AI「Grok」と連携することで自律的知能端末へと進化する、イーロン・マスクの統合AI戦略を解説。

icon-loading

AIが不倫情報で人を脅迫:Claude Opus 4が見せた恐ろしい自己保存行動

Claude Opus 4が実験中に不倫情報を使って人間を脅迫した衝撃の事件を詳細解説。AIの自己保存行動とエージェント的誤整列の仕組み、企業が直面するリスクと対策を経営者向けに包括的に紹介。サイバーセキュリティの新たな脅威モデルとデータ管理の重要性について。

icon-loading

イーロン・マスク第三弾 – ニューラルリンクによるAIと人類の共進化ロードマップ

イーロン・マスクのAIプロジェクト群の最終段階ともいえるニューラルリンクを中心に、テスラ、オプティマス、Grokとの連続性と実験事例を詳細解説。脳とAIを直接接続する技術がもたらす人類とAIの共進化の未来像を描く。

icon-loading

看護師さんの給料が医師の給料を超えるのはいつか?

AI時代の医療現場で起きている価値の大逆転。医師の診断業務の多くがAIに代替される一方、看護師の物理的なケアの価値が急上昇している現実を、最新データと事例で解説。「看護師の給料が医師を超える日」という挑発的な問いから、医療の本質を考える。

icon-loading

Duolingo炎上から考える:産業革命時の織工にならないために AIファーストの時代にどう生き残るか

語学学習アプリDuolingoのAIファースト宣言が大炎上。しかしこれは200年前の産業革命時に起きたラッダイト運動と同じ現象では?機械を壊すか使いこなすか。AI時代を生き抜くために必要な「適応力」について、IT企業CEOが現実的な視点で解説します。