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あなたの車、95%は眠っている
自家用車の稼働率はわずか約2-5%である。つまり、95%の時間は駐車場で眠っているのだ。
高い買い物をして、税金を払い、保険料を払い、駐車場代を払って、95%の時間は使わない。
Waymo:もう運転手はいらない
サンフランシスコでは、300台の無人タクシーが24時間街を走り回っている。
Googleの親会社Alphabetの子会社Waymoが運営する完全自動運転タクシー「Waymo One」は、すでに商用運行されている。数字が示す成果は驚異的である:
- 累計400万回以上の運行(2024年)
車線変更はスムーズで、横から割り込んでくる車には適切に道を譲り、自転車が来れば安全な距離を保って追い越す。赤信号も完璧に認識する。
こちらの動画で、実際のWaymoの走行シーンを見ることができる。運転席に誰もいない車が、サンフランシスコの複雑な市街地を自然に走り抜ける様子は、まさに未来である。
そして、この未来は日本にも来る。2025年から東京でWaymoの実証実験が始まる。タクシー配車アプリの「GO」と日本交通、そしてWaymoの三社協業だ。さらに、トヨタもWaymoとの戦略的パートナーシップを発表した。世界最大手の自動車メーカーが本気で取り組んでいる証拠である。
技術の核心 – なぜWaymoはこれほど安全なのか?
人間 vs AI。どちらが優れたドライバーか?
人間のセンサーは経年劣化する。40歳を過ぎれば視力は衰え、60歳になれば反射神経は鈍る。一方、Waymoの車には13台のカメラ、4つのライダーセンサー、6つのレーダーが搭載されている。360度を完璧に監視し、雨の日も霧の日も関係ない。疲れることもなければ、居眠りすることもない。
しかし、技術的なアプローチには大きな違いがある。
Waymo方式は、LiDARセンサーと高精度地図、そしてルールベースの組み合わせだ。確実性を重視し、あらゆる状況をマッピングして対応する。コストは高いが、安全性は抜群である。
Tesla方式は、カメラとAIに特化している。人間と同じように「視覚」で判断し、機械学習で運転技術を習得する。製造コストに強みを持つ。
中国勢は百度(Baidu)が急追している。政府の強力なバックアップと豊富なデータを武器に、独自の自動運転技術を開発している。
どちらが勝つかは分からない。しかし、確実に言えることは、どの方式であれ、人間より安全な自動運転車がすでに現実になっているということだ。
思考実験 – すべての車が自動運転になったら?
段階1:人間の運転が禁止される日
年間約3,000人が交通事故で亡くなる日本で、それがほぼゼロになるとしたらどうだろう?
自動運転車が普及すれば、まず段階的に人間の運転が制限されるだろう。最初は高速道路、次に幹線道路、最終的には市街地でも。「運転」は、サーキットや特別な区域でのみ楽しめる「体験」になるかもしれない。
ゴルフ場でカートに乗るように、レジャーとしての運転は残るだろう。しかし、日常の移動手段としての運転は、危険すぎる行為として禁止される可能性が高い。
段階2:都市が根本的に変わる
信号のない街を想像してみてほしい。
AI同士が完璧に連携すれば、交差点で停止する必要がない。車の流れは川のように滑らかになり、渋滞も消える。信号機という巨大なインフラが不要になる。
駐車場の革命はさらに劇的だ。
現在、都市面積の大きな割合を駐車場が占めている。しかし、車が常に稼働していれば、駐車場はほとんど必要ない。この膨大な土地が、公園や住宅地、商業施設に生まれ変わる。それらの土地がすべて他の用途に使えるようになるのだ。
「マイカー」という概念も消える。
スマホでアプリを開き、行き先を入力すれば、数分で車が迎えに来る。料金は現在のタクシーより安く、いつでも利用できる。わざわざ車を「所有」する意味がなくなる。
産業革命 – すべてのビジネスが変わる
IT・AI業界にいる我々にとって、この変化は他人事ではない。
物流・配送業界では、トラック運転手不足が深刻な問題だ。しかし、自動運転トラックが実用化されれば、24時間稼働が可能になる。人件費もゼロだ。すべての物流・配送企業がビジネスモデルを根本的に見直す必要がある。
意外なところでは、不動産業界にも大きな影響がある。駐車場用地の再開発ラッシュが始まるだろう。都心の一等地にある平面駐車場が、すべて他の用途に転用される。
エンターテイメント業界にとっては追い風だ。移動時間が完全にフリータイムになれば、動画配信、ゲーム、読書の時間が増える。通勤時間が娯楽時間に変わる。
変化は思ったより早い
18年前、誰がスマートフォンがここまで普及すると思っただろうか?iPhoneが発売された2007年、多くの人は「こんな高い電話、誰が買うんだ?」と言っていた。しかし、今やスマホなしの生活は考えられない。
自動運転も同じ道をたどるだろう。最初はゆっくり、そして一気に普及する。テクノロジーの受容曲線は、いつも同じパターンを描く。
技術に対する不安は理解できる。馬車から自動車への変化も、最初は「危険だ」と反対する人が多かった。しかし、結果的に自動車は我々の生活を劇的に変えた。
自動運転は、それ以上のインパクトを持つ技術革新だ。単なる移動手段の進化ではなく、都市の在り方、働き方、生き方すべてを変える可能性を秘めている。