Logo

11. オフショア開発契約:知っておくべき法的側面

目次

オフショア開発は多くの企業が技術的なリソースを有効活用し、コストを削減する手段として採用しています。しかし、異なる国とのビジネスを行う際には様々な法的リスクも伴います。この記事では、オフショア開発契約の法的側面に焦点を当て、注意点を解説します。

1. 契約の種類と範囲

契約の種類には請負契約、準委任契約(ラボ型)、またはそのハイブリッドが存在します。ハイブリッドの例としては、要件定義は準委任契約で行い、開発は請負契約で行う場合などです。契約書では、開発範囲、成果物、納期、費用、支払条件などを詳細に明記することが不可欠です。また、契約には変更管理手順も含め、両当事者間の誤解を防ぐために可能な限り具体的である必要があります。

2. 知的財産権

オフショア開発によって生み出されるコードや設計文書などの知的財産権の取り扱いを明確にします。これには、作成された知的財産の所有権やライセンス使用に関する条件を詳細に定める必要があります。この部分の取り扱いは後で問題になることも多く注意が必要です。

3. 機密保持

NDA(機密保持契約)はオフショア開発契約において不可欠な要素です。これはプロジェクトの情報が漏洩しないように保護するためです。NDAは、機密情報の定義、保護期間、および違反時の救済を含む必要があります。

4. 準拠法と紛争解決

国際契約の場合、準拠法が重要な要素となります。契約には、どの国の法律に従って紛争が解決されるかを明確に記述する必要があります。また、紛争解決手段として調停、仲裁、または訴訟のいずれが採用されるかも定義する必要があります。これを海外の準拠法にしてしまうと何か問題が発生した場合に対応作業量が圧倒的に増えますので注意が必要です。

5. データ保護とプライバシー

オフショア開発では、データ保護法が異なる可能性があるため、関連する法律や規制を遵守する必要があります。特に、EUのGDPRなどの国際的なデータ保護法を考慮し、プロジェクトで取り扱われるデータ保護法を遵守し、プライバシーポリシーを明確にする必要があります。

6. 品質とパフォーマンス基準

契約には、プロジェクトの品質とパフォーマンスに関する基準を明確に設定することが重要です。これには、コードの品質、テストの範囲、性能基準、およびリリースプロセスが含まれる場合があります。これに加え、SLA(サービスレベル契約)を組み込んでサービスの品質を保証することも検討すると良いでしょう。

SLAの例を以下に示します。

SLA項目目標値詳細
システム可用性99.9%システムが月間で99.9%の時間利用可能であること
レスポンスタイム< 200 ミリ秒システムがリクエストに対して200ミリ秒以内に応答
データバックアップ毎日システムのデータは毎日バックアップされる
カスタマーサポート対応時間月-金 9:00 – 18:00カスタマーサポートが利用可能な曜日と時間
カスタマーサポート応答時間< 4時間サポートリクエストに4時間以内に初回応答
ソフトウェアアップデート通知期間2週間以上新しいアップデートがリリースされる前に2週間前に通知
サービスの復旧時間(Disaster Recovery)< 24時間重大な障害が発生した場合、24時間以内にサービスを復旧
ネットワーク可用性99.9%ネットワークが月間で99.9%の時間利用可能であること
データセンターのセキュリティ水準ISO 27001準拠データセンターはISO 27001のセキュリティ基準に準拠
SLA違反時のペナルティサービス料金の10%を返金SLA項目が達成されなかった場合、10%のサービス料金を返金

7. 進捗報告とコミュニケーション

プロジェクトの進捗を追跡し、必要な場合にフィードバックを提供するための進捗報告とコミュニケーション手段を契約で定義することが重要です。これには、頻度、フォーマット、使用するコミュニケーションツールを具体的に記載します。

8. 責任と保証

開発プロジェクトで問題が発生した場合、責任と修正の範囲を特定するための条項が必要です。これには、保証期間、損害賠償、および免責事項を明記することが含まれます。また、遅延に対するペナルティなどを設けることも考えられます。

9. 終了条件

契約には、いかなる理由であれ契約を終了する際の条件と手続きを明確に規定する必要があります。これには、通知期間、終了料、および知的財産の移転などが含まれる場合があります。

10. 違反と救済

契約違反が発生した場合の救済措置を明確にすることが重要です。これには、違約金、損害賠償請求権、および契約の解除権を規定することが含まれます。

まとめ

オフショア開発契約の法的な契約リスクは高いため、これらの要因を慎重に検討することが不可欠です。異国間でのビジネスでは、文化的な違いや法的な誤解が生じる可能性があるため、これらのリスクを緩和するために契約には細心の注意を払う必要があります。これを考慮すると、日本にしっかりとした法人がある会社に発注するのがおすすめです。これにより、法的なトラブルが発生した場合でも、より安全かつ円滑に解決する可能性が高いです。

目次