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オフショア開発は、多くの企業がコストメリットなどによる競争力を向上させるために利用している手法です。ただし、オフショア開発を効果的に進めるには入念に計画を立てる必要があります。この記事では、ステップバイステップのガイドでオフショア開発の成功への道を解説します。
ステップ1: プロジェクトの目的と要件を明確にする
オフショア開発プロジェクトを成功させるためには、プロジェクトのゴールをはっきりさせることが不可欠です。この目的は、プロジェクト全体を通じて方向性を示す基盤となります。次に、期間、予算、機能、性能などの具体的な要件を詳細に定義します。関係者間でのコンセンサスを築き、全員が同じ理解を持って進めることが重要です。Gruneでは下記のような内容を整理します。
セクション | 項目 | 説明/詳細 |
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プロジェクト概要 | プロジェクト名 | プロジェクトの名称を記載する。 |
プロジェクトマネージャ | プロジェクトを担当する人物の名前を記載する。 | |
開始日 | プロジェクトの開始予定日を記載する。 | |
終了日 | プロジェクトの終了予定日を記載する。 | |
プロジェクトの目的 | 背景 | プロジェクトがなぜ始まったかの背景を記載する。 |
ビジネスの目的 | プロジェクトがビジネスに対してどのような目的を持っているか記載する。 | |
目標 | 達成すべき具体的な目標をリスト形式で記載する。 | |
スコープ | 範囲 | プロジェクトで取り組む領域を記載する。 |
成果物 | プロジェクトの成果物として何を提供するかを記載する。 | |
制約 | プロジェクトの範囲に関する制約を記載する。 | |
要件 | 機能要件 | 成果物が持つべき機能をリスト形式で記載する。 |
非機能要件 | 成果物の性能、セキュリティ、デザインなどをリスト形式で記載する。 | |
ユーザーストーリー | エンドユーザーの視点での要件をリスト形式で記載する。 | |
利害関係者 | 利害関係者 | プロジェクトに関与する利害関係者とその役割をリスト形式で記載する。 |
リスクと制約 | リスク要因 | プロジェクトのリスク要因をリスト形式で記載する。 |
制約 | プロジェクトに影響を与える制約をリスト形式で記載する。 | |
承認プロセス | 承認プロセス | マイルストーンや成果物の承認プロセスを記載する。 |
承認者 | 承認プロセスに関与する承認者をリスト形式で記載する。 | |
コミュニケーション | コミュニケーション方法 | プロジェクトで使用するコミュニケーション方法を記載する。(例: Slack, Chatwork) |
コミュニケーション頻度 | ミーティング等の頻度(例:週次、月次)を記載する。 | |
関係者 | コミュニケーションに関与する関係者をリスト形式で記載する。 |
ステップ2: 適切なオフショアパートナーを選ぶ
オフショア開発パートナーの選択は、プロジェクトの成功に大きな影響を及ぼします。国、企業の実績、技術的な専門知識、コミュニケーション能力、コストを確認します。また、同じ業界の経験があるかどうかも重要な判断基準です。パートナーとの相性を確認するために、小さなテストプロジェクトを実施するのも重要です。適切なオフショア開発パートナーの選定についての詳細は次の記事をご参照ください。
各国の職種別平均賃金の情報などに基づくプログラマの平均単価は以下のとおりです。
国 | プログラマの人月単価 (円) |
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インド | 32万 – 37万 |
フィリピン | 34万 – 40万 |
ベトナム | 28万 – 32万 |
中国 | 38万 – 42万 |
インドネシア | 23万 – 30万 |
マレーシア | 35万 – 40万 |
タイ | 35万 – 40万 |
バングラデシュ | 23万 – 30万 |
オフショア開発の成否は、適切なパートナー選びにかかっています。以下の要素を考慮しながら、慎重に選定を進めましょう。
- 技術力と専門性
- 過去の実績と顧客評価
- コミュニケーション能力(言語スキルを含む)
- 文化的適合性
- コスト競争力
- セキュリティ対策
ステップ3: コミュニケーション方法の確立
オフショア開発では、時差や文化の違いがコミュニケーションの障壁となり得ます。これを克服するために、明確なコミュニケーションプランが必要です。定期的なミーティングを計画し、使用するコミュニケーションツールを決定します。さらに、エスカレーション手順、報告要件なども明確に定義します。
効果的なコミュニケーションプランには以下の要素を含めましょう:
- 定期的なミーティングスケジュール(日次/週次/月次)
- 使用するコミュニケーションツール(Slack, Microsoft Teams, Zoom等)
- 報告フォーマットと頻度
- エスカレーションプロセス
- 言語サポート(必要に応じて通訳や翻訳サービスの利用)
また、時差を考慮したスケジューリングや、文化的な違いに配慮したコミュニケーションスタイルの調整も重要です。
ステップ4: 品質管理と監視
品質管理はプロジェクトの成功において重要な役割を果たします。カルチャーの違うチームと開発を行う場合は特にケアする必要があります。オフショアで失敗するケースの多くは品質管理が問題となっています。日本人チームだけで行う際の、当たり前をまずは排除し、仕組み化を徹底します。このためには、品質管理計画を策定し、基準、手順、およびレビュープロセスを明確にします。コードレビュー、自動テスト、パフォーマンステストなど、品質を確認するための様々な方法を活用する必要があります。以下に品質管理計画のサンプルを示します。
セクション | 項目 | 説明/詳細 |
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品質管理計画の概要 | 目的 | 品質管理計画の目的を簡潔に説明する。 |
範囲 | 品質管理が適用されるプロジェクトの領域や成果物を明示する。 | |
品質基準 | 品質基準 | 成果物が満たすべき品質基準をリスト形式で記載する。例:性能基準、コード品質など。 |
コンプライアンス基準 | 遵守する必要がある法律、規制、業界標準をリスト形式で記載する。 | |
品質測定と管理 | 品質指標 | 品質を測定するための具体的な指標をリスト形式で記載する。 |
品質監査 | 品質監査の方法と頻度を説明し、監査を行う責任者を指定する。 | |
品質コントロール手法 | 使用する品質コントロール手法をリスト形式で記載する。例:コードレビュー、テストケースなど。 | |
リスクと改善 | 品質リスク | 品質に関連するリスクを識別し、それに対する対策を説明する。 |
品質改善計画 | 品質を向上させるための戦略とアクションプランを説明する。 | |
ロールと責任 | 品質管理の責任者 | 品質管理に関与する主要なメンバーと役割をリスト形式で記載する。 |
コミュニケーション | 品質に関連する情報をどのように共有するか、コミュニケーションプロセスを記載する。 | |
承認と文書 | 承認プロセス | 品質管理計画を承認するプロセスを記載する。 |
関連文書 | 品質管理に関連するその他の文書やリソースへの参照をリスト形式で記載する。 |
これらはすべてを記載する必要はありませんが、できるだけ網羅することにより、品質向上に役立てることができます。
ステップ5: カルチャーと働き方の調整
カルチャーと働き方の調整は、国際的なプロジェクトで特に重要です。異なる文化や宗教的な背景を持つチームメンバーが協力して働く際、理解と尊重が不可欠です。
まず、宗教的な違いを考慮することが重要です。たとえば、インドではヒンドゥー教が主要な宗教で、一年を通じて多くの祭りがあります。これらの祭りの間は、仕事のペースが遅くなってしまう場合があります。そのため、プロジェクトのタイムラインを計画する際には、これらの祭りを考慮に入れる必要があります。
また、イスラム教徒のチームメンバーがいる場合、ラマダンの間は特別な配慮が必要です。ラマダンの間、イスラム教徒は日中の断食を守ります。この期間中は残業があまり発生しないようにするなど、柔軟なスケジューリングを提供することを検討すると良いでしょう。
コミュニケーションスタイルの違いも考慮すべき事項です。例えば、欧米の人は通常、直接的なコミュニケーションスタイルを好む一方で、アジアの一部では、間接的なアプローチが好まれることがあります。これを理解し、各チームメンバーに適したコミュニケーションスタイルを採用することが重要です。
ステップ6: 法的合意と契約
プロジェクトの法的な側面は、非常に重要です。契約では、納期、支払い条件、機密保持、知的財産権などの重要な項目をカバーする必要があります。法的リスクを最小限に抑えるために、契約書には十分な注意を払い、必要な場合は法律の専門家に相談してください。以下の点に注意して、綿密な契約を締結しましょう。
- 準拠法と管轄裁判所の明確化
- 知的財産権の帰属
- 機密情報の取り扱い
- 支払い条件と通貨
- 品質保証とペナルティ条項
- 契約解除条件
日本の法人および担当者が開発の窓口、責任者となれる会社は、こういった海外の会社とのやりとりの懸念を軽減することができるため安心です。日本の開発会社に依頼するのと同様の手順で依頼できます。
ステップ7: 効率的なプロジェクト管理と進行
地理的に分散したチームを効果的に管理するには、適切なツールと方法論の活用が欠かせません。
推奨される取り組み:
- アジャイル開発手法の採用(Scrum, Kanbanなど)
- プロジェクト管理ツールの活用(Jira, Trelloなど)
- 可視化されたプロジェクトダッシュボードの作成
- 定期的な進捗レビューと調整ミーティングの実施
- リスク管理とイシュートラッキングの徹底
効率的なプロジェクト管理は、プロジェクトの目標達成にとって不可欠です。プロジェクト管理ツールを使用してタスクを割り当て、進捗を監視し、問題を特定する仕組み化を徹底します。これにより、プロジェクトがスケジュール通り、かつ予算内で進行できるようにします。
ステップ8: フィードバックと改善
プロジェクトの成功は、完了時点で終わりではありません。継続的な改善のサイクルを確立することで、組織全体のオフショア開発能力を高めていくことができます。
フィードバックと改善のプロセス:
- プロジェクト完了後のレビュー会議の開催
- 成功要因と課題の特定
- 学んだ教訓のドキュメント化
- 改善アクションプランの策定
- 次のプロジェクトへの反映
このプロセスを繰り返すことで、オフショア開発の成功率を継続的に向上させることができます。
まとめ
オフショア開発の成功は、計画的なアプローチと丁寧な管理にかかっています。このステップバイステップガイドを使用して、リスクを最小限に抑えながら高品質の成果を得ることができます。国際的なコラボレーションを活かし、ビジネスの競争力をさらに高めましょう。